フラッシュボーイズ 巧妙なトリック

株の世界で勝っている個人投資家は全体の10%程度だと言われています。多くの人間はトータルでは負けているのです。
これだけ複雑な世の中ですから、どこかの国でクーデターでも起きれば株価は簡単に変わります。絶対に儲かるという保証はないのです。つまり極端な言い方をすればコイン投げゲームの世界です。

コインを投げれば確率50%で表か裏が出ます。表に賭けて運が良ければ短期的には表が連続して何度も出ることがあるでしょう。けど、10000回ほど投げれば、表と裏の比率はだいたい5000対5000になります。そのような世界で表に賭けて、勝ち続けるにはどうしたらいいか。一般人には分からない巧妙なトリックが必要になります。それが株の世界で行われているのです。

有名大学の就職先として外資金融は給料がいいことで人気があります。ではその高い給料はどこから出てくるのか。どうやって勝ち取るのか。その手法がこのFlash Boysに載っています。それは、他の投資家よりも早く情報を手に入れること。High-frequency tradingという世界では光ファイバーによって1000分の3秒ほどライバルよりも早く情報が手に入るようになる。そうすれば株価が上がるか下がるか相手より早く読めるのだとか。まるでインサイダーのような話ですが、そうして素早く手に入れた情報をもとに巨額の利益を手にした集団がいることを、主人公のブラッド・カツヤマ氏は見事に暴きだします。これでは個人投資家はたまったものではありません。出来レースで勝負しても負けてしまうのです。
ところで、1000分の3秒早く情報を手に入れるためには、地中に光ファイバーを埋め込む工事が必要になります。その工事を優先するために地元の人間達を説得する必要も出てくると。全てはゼロサムゲームの世界で1000分の3秒ほどライバルより早く情報を手に入れるためです。一部の人間は裕福になれますが、これでは国家全体の福祉にいい影響をもたらすとは思えません。私たちの描く理想的な資本主義社会を目指すにはどうしたらいいのか考えさせられる一冊でした。

PS 丸善オアゾの洋書コーナーでは売上ランク1位になってました。

Flash Boys

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