巨匠が奏でる音の世界

T2 Judgment Day (1991) 1子供の頃、ターミネーター2を見て衝撃を受けた。

一回目見たときはストーリーの面白さに夢中になっていたが、二回目、三回目と見るうちに徐々に役者のセリフに意識がいくようになった。

シュワルツネッガーの“Hasta la vista, baby”をはじめ、T2の雰囲気を生きたまま日本語の世界に翻訳する「字幕の女王」戸田奈津子先生の才能に圧倒されたのだ。帰国子女だった私は「英語は英語のまま理解すればいい」と開き直っていたが、日本語の運用能力次第で英語の伝わり方がこうも違うのかと子供ながらに感動した。それからは英文和訳の巨匠・佐々木高政先生の「英文解釈考」など、達人が英語の味を殺さずにどう日本語に訳すのかと、興味を持つようになっていった。

しかし佐々木先生の古典的名著を入手はしたものの、当時の私には難解すぎてついていけずに放り出してしまった。途方に暮れているときに出会ったのが國弘正雄先生の「英語の話しかた」という本だった。國弘先生はしっかり座って同じ文章を最低でも30回は声に出して読むよう著書で力説されていた。只管打坐ならぬ只管朗読である。私は気に入った文章をいくつか選び、何回も同じ文章を声に出して読んでいくうちに、「音の世界」で英語を覚えていき、読むスピードが速くなり語彙力も鍛えられ、自在に使いこなせる英作文の表現も蓄積されたりと、英語の力がメキメキついていくのを実感した。言語とは結局は「音」が大事なのだと、その時はっきりと感じたのだ。勢いは止まず、そのまま英検1級の二次面接と国連英検特A級の二次面接も一発でパスすることができた。

佐々木先生や戸田奈津子先生の名訳の数々が「絶妙な音の響き」から来ていることに気付いたのは随分後になってからだった。良書は読み手を選ぶのだろう。

語学学習は、ただ品詞分解をしたり黙々と文法問題を解いていくだけでなく、「文章の音読」と「日々のリスニング」が実力向上に不可欠であることを偉大な先達から教わった。音が大事であり、音にすぐ反応するには理屈ではなくスポーツと同じで練習あるのみなのだ。習うより慣れろとは至極名言である。

机に向かう作業が多い受験勉強という世界では忘れられがちだが、この音の世界の大切さを生徒にも伝えていきたい。

 


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